面白い特許:ちょっとしたものでも、アイデアのまとめ方次第では特許権を取れる
特許第5917462号「熱可塑性合成樹脂製立体装飾片とその製造方法」
<特許公報の図1>
ちょっとしたものでも、アイデアのまとめ方次第では特許権を取れる
<ざっくり解説>
今回は、いきなり請求項1(権利要求をする内容)の記載と図1、図5をみてみましょう。
請求項1は、
「熱可塑性合成樹脂よりなり、外輪郭線を有し、立体模様が形成された上層3と、
下層5とよりなり、
上層3の上面に、プライマー層13が配置され、該プライマー層13の上面に透明耐熱シリコーン樹脂層7が配置されていることを特徴とする、合成樹脂製立体装飾片。」
です。
図1は、制服用エンブレム(立体装飾片1)であり、図5は、図1の立体装飾片1をA-A’線で切断した断面図です。
請求項1だけ見れば、化学の専門的な発明のような印象を受けるかもしれません。しかし、実際のところは、日常のちょっとした工夫をうまく文章化したものといえそうですよ。
この発明は、衣類等に装着されるエンブレム、ワッペン、アップリケ、ステッカー、リボン、飾り紐等に使われる立体装飾片に関するものです(図1参照)。この発明によって、衣服等の被装着物に装着後、アイロン、熱プレス等の加熱、加圧により、形状が潰されたり、崩れたりする問題や、上層に印刷をした場合、該印刷面が熱により変色する問題などを防ぐというものです。
ですので、この発明は、アイロン等を使ってエンブレムやアップリケ等を熱接着する際によく生じる不具合を解決しようとしたものであり、その解決方法として、上層に透明な耐熱性を有する部材(透明耐熱シリコーン樹脂層)を設けたものだといえそうですね。
そうしますと、熱接着のときに形状が潰れたり、崩れたり、変色したりするから、そういったことが起きないよう、耐熱性のある部材でカバーしようというのが発想の原点といえそうです。こういった発想であれば、化学の専門的な知識を持つ技術者でなくても、思いつけそうですね。
しかし、熱接着のときに形状が潰れたり、崩れたり、変色したりするから、そういったことが起きないよう、耐熱性のある部材でカバーしようというだけでは、単なる工夫のレベルにすぎず特許性がない、と判断されるかもしれません。
そこで、この特許権者は、その部材を「透明耐熱シリコーン樹脂層」という具体的な部材に限定したこと等によって、この発明を特許性を有するレベルに高めたのかもしれません。こういったちょっとした限定を行うことで従来技術との差別化を図ることは、弁理士のアドバイスもあったのかもしれませんね。
今回の特許発明は、“ちょっとしたものでも、アイデアのまとめ方次第では、従来技術との差別化を図ることができ、特許権を取れるかもしれませんよ”という視点でご紹介しました。こういったアイデアのまとめ方は、専門家である弁理士に相談してみると良いかもしれません。
この発明についてもっと詳しいことが知りたい方は、この特許公報を参照してみてください。
~特許発明も、まずは小さなアイデアから~
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