「みんなで知恵を出し合いましょう」って、所詮、無理な話

「みんなで考えれば、きっと良いアイデアが生まれるはずだ」
これは、結構、あちこちで信じられていることです。
みんなで力を出し合って何かを解決するということは、「協力」とか「助け合い」のような響きがあり、
好まれる形のように思われます。

日本人は特に「みんなで」が好きですからね。
個人主義のアメリカとは違って、「みんなで何かをしましょう」が好きですね。
三人寄れば文殊の知恵。
一人では無理でも、みんなで力を出し合えば解決できるはず、と信じられています。

では、知財権が絡む場合でも、それが正解なのでしょうか?

「みんなで考えましょう」
これって、知財権が絡むことだと、面倒なことになります。
現実的ではありません。
到底無理な話だと思います。

そのことを説明してみたいと思います。

アイデアを出せない人が集まっても、やっぱり良いアイデアは出ないのでは?

アイデアはコツさえつかめば誰でも出せるものではありますが、そのコツを体得していない人はいくら考えてもアイデアは出てこないと思います。
ネガティブ思考の人は、アリジゴクに嵌ってうんうん唸っているだけです。
そのような人が10人、100人、1000人と集まっても、きっと何も出てきません。
100人の凡人を集めても、1人の優秀なアイデアマン、クリエイターにはかないません。
このことは、簡単に理解できると思います。

逆に、アイデアが自分で出せる人は、アイデアの無い人のうんうんと唸っている声は雑音でしかありません。ましてや、アイデアを膨らませようとしているのに、保守的なネガティブ意見など聞きたくないでしょう。

せっかくアイデアを出したのに、
「それって、こういう欠点があるよ」とデメリットばかり探すひと。
「それでうまく行くなら、もうとっくに誰かがやってるはずだよ。」と新しいアイデアを信じないひと。
嫌ですね。

しがって、アイデアが出せる人にとって、他の人は邪魔です。

アイデアは、出るときは一瞬で出るものだと思います。それも一人の頭の中に。

なかなか解決できない課題の解決策を長年考えていたとしても、解決策がゆっくり少しづつ出てくるというものではありません。
何かのきっかけで一瞬で出てくるものです。
その一瞬のひらめきは、一人の脳みそに出現するものです。
複数人に同時に出現するわけではありません。

したがって、アイデアを出す(または、発明をする)というのは基本的に独りで行う作業です。
孤独な行為なのです。

実は、もっと大きな問題があります。

喧嘩のもと

良いアイデアが出た場合、権利はどうなるのでしょうか?

複数人でアイデアを出すことにしたとします。
その結果、良いアイデアが出たします。

そのアイデア(発明)の権利は、誰が持つのでしょうか?
主催者が独り占めですか?
配分するのですか?
どうやって分配するの?

みんな一緒にうんうん唸ったとしても、最終的に出てきた素晴らしいアイデアは、その中の独りが出したものです。

もちろん、きっかけを作った人、アイデアの中心的部分を発言した人、言葉足らずな部分を補った人もいるでしょう。
誰かが突破口となるアイデアを思いついてから、つぎつぎと
「それなら、さらにこうしたらいいんじゃない?」
とアイデアを補強していった人もいるでしょう。

では、その場合、そのアイデア(発明)の権利の持ち分はどうなるのでしょうか?
平等に等分なんでしょうか?
喧嘩にならないでしょうか?
最初にそういう取決めをしておくのでしょうか?
「私の方が貢献したのだから、多く貰うべきだ」
「あなたは結局、何も役立つ発言はしていないわ」
とか、喧嘩にならないでしょうかね?

そういう会合の前にきちんと取決めはあるでしょうか?
多分、無いと思います。
あったとしても、その重要性を皆が理解しているかは疑問です。
規約があったとしても、そんなの読みますか?

一人でも反対したら特許出願はできない

そのアイデア(発明)が優秀なので、特許出願しましょうとなったとき、
みんなが権利者になったら、そのあと収集がつくのでしょうか?
みんなは特許をとりたいのに、誰か独りでも反対する人いたら?
特許法では、共同で発明した場合は、共同でしか出願できません(特許法第38条)
複数人で発明した場合、たった一人でも反対したら特許出願できなくなるのです。
これって、面倒なことになると思いませんか?

共同で出願するなら、費用は均等に負担すべきです。
しかし、、その中の人で「俺、払えない」と言われたら?
非協力的な人と一緒に発明したら、とても面倒なことになりますね。

では、面倒だから権利を取らないことしたとします。
その中のひとりがこっそりその発明を改良して、ひとりで特許をとったら?
改良発明は、改良した者に権利があります。ひとりで特許出願できます。
そのひとりだけ改良発明の特許を取ったことになります。
もちろん、皆がした基本発明に、特許がなければ、みんなでその発明を自由に実施できます。

しかし、改良発明と同じようにしなきゃ商売にならないという事態が起きるかも知れません。そうしたら、特許を取られてしまったのですから、自由には製造販売できなくなります。

複数人で発明をすると面倒なことが起きることが分かったと思います。
もちろん、同じ会社の中の開発チームで複数人で発明するというのなら、それは仕事の一環なので問題にならないでしょう。
問題なのは、見ず知らずの人との共同とか、個人が集まってアイデアを出しましょうとかの場合です。

まとめ

「みんなで力を出し合う」というのは理想的な行動なのですが、知財権が絡むことだと、なかなかうまく行きそうにありません。
もしうまく行く方法があるならば、教えて欲しいです。

みなさんは、どう思いますか?

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