面白い特許:効率的な蒸気機関
特許第6339731号「レシプロ式蒸気機関」
<特許公報の図3>
効率的な蒸気機関
<ざっくり解説>
この発明は、水などの作動流体をシリンダ内で蒸気化させてピストンを往復運動させるレシプロ式蒸気機関に関するものです。
このレシプロ式蒸気機関は、
シリンダの膨張室を拡張、収縮させることによりピストンを往復運動させるレシプロ式蒸気機関において、
前記膨張室に対して作動流体を噴射する噴射部と、
前記噴射部に供給する前の前記作動流体を高圧化し、且つ、前記シリンダからの排気を用いて加熱する高圧加熱部と、
前記膨張室に噴射される前の前記作動流体を前記噴射部において加熱する第1加熱部と、
前記シリンダの前記膨張室が収縮し、前記ピストンが上死点に達した状態の前記膨張室を負圧にする負圧部と、
を備え、
前記膨張室に噴射された前記作動流体が蒸気化して体積が膨張することにより前記膨張室が拡張される、というものです。
それでは、この発明の具体的な構成について、図3を参照しつつ見ていきましょう。図3は、本発明に係る第1の実施の形態であるレシプロ式蒸気機関10の構成例を示すブロック図です。
なお、液相に遷移している作動流体30を液相作動流体30L、気相に遷移している作動流体30を気相作動流体30Gと標記しています。また、実線は液相作動流体30Lの経路、破線は気相作動流体30Gの経路、2点鎖線は制御信号の経路をそれぞれ標記しています。
レシプロ式蒸気機関10は、タンク11、第1フィルタ12、高圧ポンプ13、高圧タンク14(「高圧化部」に相当する部位ですね。)、噴射部18、シリンダ19、真空ポンプ25(「負圧部」に相当する部位ですね。)、発電部27、及び制御部28を有しています。
まず、噴射部18には高温高圧の液相作動流体30Lが供給されます。そして、噴射部18は、その一端がシリンダ19の膨張室22に挿入されており、高圧タンク14から供給される高温高圧の液相作動流体30Lをさらに加熱しつつ、細かな霧状の粒子として膨張室22に噴射します。
膨張室22には、第2加熱部23、真空弁24、及び排気弁26が設けられています。
第2加熱部23は、噴射部18から膨張室22に噴射された高温高圧で霧状の液相作動流体30Lをさらに加熱します。この加熱により、膨張室22に噴射された霧状の液相作動流体30Lはさらに高温となり蒸気化します。つまりは、気相作動流体30Gに遷移してその体積を膨張させています。
真空弁24は、ピストン20が上死点に達したときに開放されます。これにより、膨張室22と真空ポンプ25とが連結されて液相作動流体30Lが噴射される前の膨張室22が負圧となり、膨張室22が負圧とされたときに噴射部18から膨張室22に液相作動流体30Lが噴射されます。また、真空弁24は、噴射部18から膨張室22に液相作動流体30Lが噴射される前に閉鎖されます。
以上の動作により、液相作動流体30Lが噴射される前の膨張室22が負圧とされるので、噴射された高温高圧で霧状の液相作動流体30Lを膨張室22の全体に拡散させることができます。
また、噴射された霧状の液相作動流体30Lの圧力を下げることができるので、膨張室22が負圧とされない場合に比較して、液相作動流体30Lをより低い温度で気相作動流体30Gに遷移させることができます。
つまりは、液相作動流体30Lを気相作動流体30Gにより遷移し易くなりますね。
本発明の蒸気機関によれば、作動流体としての水を蒸気化するに際し、圧力を下げるとともに十分な熱量を与えることができます。
一般に、水を蒸気化する場合、潜熱を越える熱量を与える必要があるところ、潜熱を越える十分な熱量を与えれば、より蒸気化し易くすることができる点に着目したのかもしれませんね。
この発明についてもっと詳しいことが知りたい方は、この特許公報を参照してみてください。
記事008:JPB6339731
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