面白い特許:ニッチ商品にも特許が効く?

特許第5908943号「クラックスケール及び亀裂幅検査記録方法」
<特許公報の図1>


ニッチ商品にも特許が効く?~専門職が使う業務用品こそ、特許のネタになりそうな工夫の宝庫!?~

<ざっくり解説>

 この発明は、建造物の亀裂(クラック)を計測するためのクラックスケールおよびそれを用いた亀裂幅検査記録方法に関するものです。建物、橋、トンネルなどの建造物の工損調査では、亀裂が生じているか、亀裂が生じている場合、その長さや幅を記録するために、写真撮影を行ったりしますが、その際に、亀裂の幅の計測や証拠写真の撮影の際の参照ゲージとして使用されるスケールです。

 この特許公報によれば、従来のクラックスケールとして、例えば、図18のようなものがあるとのことです。しかし、こういった従来品では、クラックの証拠写真を撮影する際、クラックスケールをクラックにあてがった状態で写真撮影を行うには、1人では難しいかもしれませんね。例えば、クラックスケールを壁面に保持する手と、カメラを構えるために保持する手と、シャッターを押す手とが必要であり、一人では手が足りないですよね…。
 また、撮影は壁面からある程度離れた位置から行う必要があるため、クラックスケールを壁面に保持した人は、撮影位置のカメラには手が届きませんよね…。

<特許公報の図18(従来のクラックスケールの一例)>

 この特許発明は、こういった不便な点を改善するものとして、1人だけでもゲージ目盛りをクラックにあてがって、離れた位置からでも証拠写真を撮影することができるようなクラックスケールを提供するものです。では、図1を見ながら、この特許発明のクラックスケールの構造をみていきましょう。

 図1に示されている、特許発明のクラックスケールは、
ゲージ板2と、細長い筒状のスライドケース3を備えており、これらは透明な部材で構成されています。そして、ゲージ板2は、スライドケース3の筒状の中にスライド収納可能なように設計されています。

② ゲージ板2の上面には、一方の長手方向の縁辺(長手縁辺)に沿って、各種幅を示す複数のゲージ目盛4が直列に付されている。各ゲージ目盛4は、長方形であり、長手縁辺に沿った幅が目盛幅を表してます。また、ゲージ板2上面の各ゲージ目盛4の横手には、ゲージ目盛4の目盛幅を示す目盛数字5が付いています。
 スライドケース3が透明であるため、スライドケース3の筒内のゲージ目盛4及び目盛数字5は、スライドケース3を透過して外部から視認できますね。

③スライドケース3の表面には、左右の短手方向の縁辺(短手縁辺)に沿って、目立ちやすいようにマーカ6が付いています。そして、スライドケース3の上面中央には、三角形の指示標7が付いてます。この指示標7は、現在どのゲージ目盛4に注目しているのかを示す標識として使えます。

④そして、スライドケース3の裏面には、ゲージ板2を壁面に脱着自在に着接する着接部8がついてます。

 こういった構造のクラックスケールだと、壁に貼り付けることができるので、誰かが手で抑える必要がなさそうですね。そして、目立つマーカがついているので、壁から離れた位置からとった写真でもちゃんとクラックの幅が表示されているので、証拠写真として使えそうですね。

 こういったクラックスケールは、建築関係の専門職の方が使う業務用品として、「ニッチ商品」に該当するといえそうですね。

 こういったニッチ商品は、一般の人々は必要としないので、一見すると商売になりにくいようにも思えますが、一部の特殊な人々にとっては必要不可欠な物であり、一定のニーズがあるといえます。その一方で、市場規模が小さいことから、大手の既存企業が少ない可能性があります。ですので、ニッチ商品に狙いを絞って、特許を取って、一発当てるのもいいかもしれませんね!

 この発明についてもっと詳しいことが知りたい方は、この特許公報を参照してみてください。

記事097:JPB_0005908943

~特許発明も、まずは小さなアイデアから~

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