特許、それとも実用新案? どっちが良いの?違いは?

発明を保護する権利として、特許権と、実用新案権があります。

実用新案は、「実案」と略して呼ばれることもあります。

実用新案では、「発明」とは言わずに「考案」と言いますが、同じ意味と考えて良いです。
実用新案では、基本的に、物の形状や構造を保護対象とするので、コンピュータ関連の発明や化学物質の発明は保護対象ではありません。何かの「製造方法」も、保護対象ではありません。これらは、特許で保護するしかありません。

個人の発明の場合は、生活用品の発明の場合が多いので、特許出願すべきか、実用新案登録出願をすべきか、迷うところですね。

特許の特徴

メリット:新規性・進歩性等の審査を経て特許権が発生するため、権利の有効性が明確。
存続期間は出願から20年と長い。
デメリット:審査の費用がかかる。審査に時間がかかる。

実用新案権の特徴

メリット:審査がないので安い。出願から数か月で登録され、実用新案権が発生。
デメリット:審査を経ないので、権利の有効性が分からない。
存続期間は10年と短い。
権利の行使には、特別な注意が必要。

上記のようなメリット、デメリットがあるのですが、はっきり言って迷いますよね。
これは個人的な見解ですが、個人の発明家の方へは、特許出願をお勧めします。
権利の有効性が確認できた方が良いと思うからです。

実用新案権は中小企業などで、実用新案権の性質を良く理解した上で戦略的に使うのならば良いのですが、個人の発明家には向いていないと思います。

もう少し詳しく話します。
ある発明をしたとき、特許出願でも実用新案登録出願でも可能な場合があります。

「実用新案なんてあんまり聞いたことないから、特許にする」という考え方もあるでしょう。

基礎知識として、特許は、審査があり、審査を経て、特許権が成立します。審査には、費用と時間がかかります。

一方、実用新案登録出願は、審査がありません。出願すれば、数か月で登録され実用新案権が取得できます。
しかし、審査されていないので、権利の有効性は分からない状態です。誰かが模倣した場合、直ちに権利を行使することはできません。
(「権利の行使」とは、模倣した人に対して販売の中止を求めたり、損害賠償を請求したりすることをいいます。)
特許庁の審査官による技術評価(審査に似ている)をしてもらい、有効性が認められた後でなければ、権利を行使できません。

特許の存続期間は、出願から20年ですが、実用新案権は10年と短いです。

さて、どちらが良いでしょうか?

弁理士によっても意見が分かれる
特許にすべきか、実用新案にすべきか?

これは、弁理士さんによっても答えが分かれるところです。
化学の発明やコンピュータソフトの発明は、実用新案の対象ではありませんので、この分野しか扱っていない弁理士さんにあたると、「実用新案で出願するなんて、考えられない」と言い切られてしまうかも知れません。

実用新案権も、使い方を知っていればそれなりに有効な権利です。
しかし、かなり高度なスキルが必要だと思います。

私の考え
私の考えですが、あなたのような個人発明家の場合は、基本的には特許出願をお勧めします。
事業をしている会社が、「これは特許は取れないかも知れないけど、他社の模倣を少しでもけん制のために、取りあえず出願しとこう」というのであれば、実用新案権でも良いでしょう。
しかし、あなたのような個人の場合、まだ事業はしていないですよね。
発明して何かしら権利が欲しいという理由は、客観的にお墨付きが欲しいということなので、新規性や進歩性などの要件を審査した後に権利が生じる特許権の方が、あなたの目的にあっていると思います。

特許出願をすると3年以内に特許庁に対して「審査を始めてください」という請求をする必要があります。審査の請求には15~20万円かかります。
審査の請求をしなかった場合は、出願は取り下げらたものとみなされます。

逆に言えば、3年間は、審査の請求をしなくても良いのです。
他人に売り込むためには、その発明が盗られないように、まずは出願はしなければなりません。しかし、すぐに審査請求をする必要はありません。
3年間の間に、売り込んでみて、見込があれば、費用をかけて審査請求すれば良いのです。
(もちろん、すぐに結果が知りたい場合は、出願してすぐに審査請求しても良いです)

一般的には、「実用新案権」より「特許権」の方が響きが良いように思います。

ただ、特許出願した場合「特許出願中」と製品に書くことはできますが、「特許取得済み」とは書けません。
どうしても「取得済み」と書きたいなら、実用新案を選択すると良いですね。
実用新案なら、出願から数か月で登録され実用新案権が発生しますので、商品について「実用新案登録****号」と記載して宣伝効果を狙うことができます。

まとめ
・実用新案の特徴を良く理解して、「実用新案登録****号」という権利がとにかく早く欲しい場合は、執拗新案登録をお勧めします。
それ以外の場合は、特許の出願をおすすめします。
あくまで、個人的に見解ですが。

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